失われた読書環境を求めて
読書環境2.0 とは
読書環境と聞いてまず思い浮かべると思うのが、本棚や書籍、それを読む机や椅子などのことかと思う。しかし、ここでは2020年時点で自分が採用している書籍データの保存先と書籍データ、それを読む読書端末(総じて読書環境2.0 と呼ぶ)についてまとめておこうと考えている。
本の自炊については先のブログで既に取り上げたのでここでは扱わない。
書籍データ
書籍データとしては次の3種類を利用している。
- jpg, png(自炊した漫画の画像データ)
- pdf(自炊した漫画以外の書籍データ)
- 電子書籍 Kindle
漫画データとそれ以外で分けている理由としては、安価なタブレットで読むときのもっさり感が jpg の方が pdf より少なく感じる(サクサク読める)ためである。
電子書籍として Kindle を採用しているのは、サービス終了による書籍データへのアクセスができなくなるリスクが他の電子書籍サービスに比べて低いためである。
全ての本が Kindle で電子書籍として販売されているのであれば、上記のように自炊した書籍データを扱う必要はない。しかし残念ながら絶版された古い本や出版社や著者の事情で紙の書籍しか販売されない書籍もかなりの割合で存在している(日本の市場で電子書籍の売上割合も2019年時点で20%程度らしい)。そのため、書籍データ自体は今後も自炊による pdf, jpg というものを扱っていく必要があると考えられる。
紙の書籍との比較として大事なのが、書籍データは紙が日焼けで黄ばんだり虫食いが発生しないという点である。紙の書籍を何十年も日焼けで黄ばませずに管理することは通常の管理の仕方だと難しい。しかし、電子書籍データであれば、データの破損や消失さえしないように気をつければ書籍の物理ダメージという点に気を払う必要がなくなる。それが電子書籍データのメリットである。
書籍データの保存先
書籍データの保存先としては次の3点を利用している。
- Kindle サーバ(Amazon が管理しているサーバ)
- クラウドストレージ(Google Drive)
- 自宅ファイルサーバー(FreeBSD, ZFSファイルシステム, RAID-Z2)
1個目はAmazonが Kindle サービスを提供するうえで利用している(であろう)サーバである。これはユーザーとしてはデータ自体を管理する手間は不要である。ただしKindle というサービス終了に伴い、データへアクセスできなくなるリスクもある。
2, 3個目は自炊データの保存場所として利用している。2箇所に同じデータを置くのは冗長性を確保するためである。例えばクラウドストレージのサービス側で障害が発生し、データが失われてしまったとしても、自宅ファイルサーバー側にデータが残っていれば、復元が可能であるし、逆に自宅が地震等の災害で破損しファイルサーバーが失われたとしても、クラウドストレージ側にデータが残っていれば復元できる。
もちろん、2箇所の保存先で同時にデータが失われた場合は復元できなくなるが、そのようなレア災害が2件同時に起きる可能性など現実的には無視していいレベルと考えられる。
電子書籍データの方が紙の書籍よりも消失しやすいという言説を聞くことがある。しかし、例えば 2019年の台風で図書館の書籍が水浸しになった事例 などを鑑みると、管理の仕方によっては電子書籍データの方が紙の書籍に比べて長期に保存が可能なのではないかとも思える。実際上記のような仕組みで書籍データを何年保管しつづけられるか今後も継続していくことが証明になると思う。
読書端末
読書端末としては、次の4点を利用している
- iPad Pro 12.9 インチ(大判書籍, 論文, pdf へ書き込みながらの読書用)
- Kindle Fire HD 10.1 インチ+512GB Micro SDカード(kindle, 書籍pdf, 漫画jpg 用)
- Kindle Paperwhite 6インチ(kindle 主に書籍用)
- スマートフォン 6.2インチ(スマホしか持ってないとき用)
読書端末として、重要なのは優先度順に画面サイズ、データ容量、重さ、サクサク動作する点、目に優しい点、解像度 etc がある。
一番重要なのは画面のサイズである。自炊した書籍の pdf は固定のレイアウトで見る必要があり、小さい画面だと文字も絵も小さくなり視認性が悪くなるからである。iPad Pro 12.9インチのメリットはこの点で 大判の書籍や論文などを読む際に画面サイズを担保できる点が良い。ただし、固定レイアウト販売でない Kindle であれば文字サイズやレイアウト変更が比較的自由にできるため、スマホのような小さい画面でもそこまで問題なく読むことが可能である。
二番目に重要なのが、データ容量である。これは将来的にネットワークの速度が今より速くなっていけば優先度は下がる。しかし、現状では読みたい書籍や kindle がオンライン上にありそれをダウンロードして読むまでの待ち時間が数十秒から1分程度発生する。この待ち時間をなくすために Kindle Fire HD 10.1インチに 512 GB の Micro SD カードを挿して、その SDカードにすべての購入した Kindle 書籍および自炊した書籍データをすべてダウンロードしておくという方法を採用している。最初のダウンロードにはある程度時間が必要だが、一度ダウンロードさえすれば後はいつでもダウンロードなしに所持している全ての電子書籍をすぐに開けるというメリットがある。
三番目に重要なのが、重さである。10インチを超えるタブレットは 500–650g 程度あるため、長時間手で持って本を読むのは不向きである。そのためタブレットスタンドやタブレット用のハンドストラップなどを利用して極力腕への負荷を軽減してくのが好ましい。
あと地味なポイントだが紙の書籍に比べて電子書籍をタブレットで読むメリットとしては、ページめくりの動作をリモコンに切り替えられる点を挙げておきたい(下記動画参照)。
紙の本だと手の位置を本に固定して紙をめくる動作が必要だったが、タブレットであればスタンドに立てかけた状態で手をぶらーんとリラックスさせた状態でリモコンのボタンを指でポチポチ押すことでページをめくっていくことが可能である。
ページめくりリモコン導入の仕方は下記等を参照してほしい。
ちなみにじぶんはページめくり用のリモコンとして下記を使っている。
本棚としての Kindle の欠点
Kindle の本棚としての一番の欠点は書籍のカテゴリー分けが弱く視認性がすこぶる悪い点がある。紙の本から電子書籍へ移行できない障壁の一つとして Kindle 本棚の視認性が悪いためどこにどの本があるかわかりにくい点が挙げられている。じぶんとしてもその点大いに同意するところである。
その欠点をカバーするための運用として、じぶんは Kindle のコレクションという機能を用いている。コレクションの具体的な方法は下記ブログに記載されているので省略する。
コレクション機能の欠点としては購入後イチイチ手で細かなカテゴリー分類するのがめちゃくちゃめんどい(とてもしんどい)という点がある。
じぶんは上記ブログのように細かく分類するのは早々に挫折し、シンプルに 5カテゴリーにのみの分類で運用している。カテゴリー分類は個人の興味に依存する部分だと思うので、個々で好きに分類すればいいと思う。以下参考まで紹介する。
- Comic(漫画)
- Tech(技術系)
- Business(ビジネス系)
- Science(数理科学系)
- Others(その他、教養)
ちなみに手持ちの Kindle 本 1700冊を下記カテゴリー分類する手間はだいたい4–6時間程度かかった。一度にすべて分類しようとすると心が折れるので1日30分とか1時間くらいコツコツ分類していくことをお勧めする。
将来的には Kindle 自体の本棚の機能として自動的に分類されるようになって欲しいし、もっと言うと Spotify みたいな音楽サブスクリプションサービスでよく見かけるおすすめプレイリストのような本棚リストがシェアされてくるような本棚となってくれても面白いかもしれない。
おわりに
紙と本棚でもって読書していく環境を読書環境1.0 だとすると、電子書籍とデータの保存先でもって読書してく本記事は最初に述べた通り読書環境2.0 と呼んでもいいんじゃないかと思う(呼ぶだけならじゆうである)。2020年現在は読書環境1.0 と 2.0 がまだ混在した状態が続いており、今しばらくこの状況は変わらないと思う。ただ、アイデアとして読書環境3.0 の種はいろんなところに転がっているようにも見える。
読書のような古くからある習慣も時代によってより別の形に変わっていくものだろうし、個人的にはその時々でよりよい(とじぶんが思える)ものへとアップデートしていきたいと考えている。そのため、今回の記事もまた何年後かにはアップデートすべきものである。
失われた読書環境を求めて